猫の盛りには代えれない
社員食堂で夕食を食べているときに、どういう流れだか「ねこまんま」の話題になった。若い連中が、ねこまんまの好き嫌いについて語り合っている。
「ねこまんまって、時々やたらと食いたくならね?」
「え~? だってアレ、ただの汁かけ御飯じゃん」
え……?
ちょっと待て。
「君らの言ってる『ねこまんま』てなぁ、どんなものを指してるわけ?」
「どんなものって……。御飯に味噌汁かけただけですけど」
「ちが~う! それは犬用で、ねこまんまは御飯に鰹節でしょうに」
「うっそで~~~~!」
この俺様の半分ぐらいしか人間経験のない奴等に、全力で否定されてしまった。
おかしい。何かが間違っている。この国の文化が、ゆがんだ形で伝わろうとしている。
危機感を覚えた私はフロアに戻ると、定時になっても退社できないわびしき残業労働者連中に対して聞き取り調査を開始した。
一人目
「ねこまんまですか? 御飯にお味噌汁をかけたもの」
おのれ国賊め。
二人目
「二種類あって、御飯にお味噌汁バージョンと、御飯に鰹節バージョン」
おぉ、微妙なラインだ。
三人目
「御飯に鰹節」
よし! じゃ、御飯に味噌汁は?
「イヌメシ……」
君を人間国宝と呼ぼう。
立派な教育を受けた次世代を担う人材を発見して安心したのだが、最初の二人は簡単には引き下がらなかった。
「ほら、ここには『日本の標準は「ねこまんまはご飯に汁をかける」に決定いたしました。』って書いてありますよ」
アホタレめ。そ~ゆ~ふ~に断言されたらすぐに信じちゃうから、この国の文化が揺らいで行くのだぞ。だいたいこのページには、何の根拠も記されてないではないか。
考えても見たまえ。
猫は猫舌なのだ。
熱い味噌汁をかけた飯など出したら、それは新手の拷問だろうに。
誰が何と言おうと、ねこまんまは御飯に鰹節である。これはもう、改めて決定するまでもなく「昔からそう決まっている」のである。
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