さて無事にニフティへのサインアップも済ませ、まずはフォーラムというものに入ろうという事になった。
フォーラムというのは、各ジャンルごとに同好の志が集まって会議室という掲示板で意見交換をしたり特定のテーマで話し合いをしたり雑談をしたり、といった場のようなものである。ニフティ以外では「シグ」と呼ばれている商業ネットもあったらしい。
ネット生活そのものを始めたばかりなのでまずは初心者向けの、という事で初心者フォーラムに入った。フォーラム名はFHELP。頭のFは全フォーラムに付く事になっているので、二文字目からがフォーラムの内容を表している。SFフォーラムはFSFだし、模型フォーラムならFMOKEIとなる。ではFGALは女の子が山盛り、というわけではないのがまた難しいところであるが。FGALについてはまた後日説明しようと思う。
パソコン通信では、現在のWebブラウザで表示させてマウスでクリック、というインターフェイスとは違って、全てプロンプトに対してコマンドを打ち込むという方法をとる。フォーラムへは、GOコマンドというコマンドで入る。例えばFHELPに行くなら「GO FHELP」と打ち込むのである。すると画面に、フォーラムのトップメニューが表示される。「会議室」「データライブラリ」「お知らせ」「リアルタイム会議室」といったメニューが、それぞれに番号を付けて表示されており、その番号を入力すればそのサービスに入るという形になっている。
慣れてくるとメニュー表示をオフにして、直接そのサービスのコマンドを打ち込むという技を使うようになる。これは当時のニフティが従量課金制でありなおかつ料金が青天井だったためである。
他のネットも従量課金制ではあったが、例えば日経MIXなどは上限が一万円だったと記憶している。つまりどんなに使っても一万円を超えることはない、というわけである。もっとも、全サービスが使えたかどうかは不明である。
そしてニフティは三分十円だったか一分十円だったか忘れたが、使えば使っただけ課金される仕組みだった。上限はない。だからメニューの表示を省略する事でアクセス時間を短くするというのは、当然の対策だったのである。
その課金対策を更に勧めていくと、オートパイロットという仕組みを使うことにたどり着く。これはサーバへのコマンド入力を人間が手入力でやるのではなく、通信ソフトのマクロを使って実行させるのである。そうすれば人間より反応が早いから、決まったことだけをやらせるならより効率的にネットを巡回する事が出来る。
こうして、より短いアクセス時間でより多い情報をダウンロードするのが、パソコン通信の賢い利用法だとされていた。
この頃は現在のような、定額制で常時接続があたりまえの時代が来るなど、想像もしていなかった。
前置きが長くなってしまった。
FHELPに入会した私は、まずフォーラムのサービス中でメインとなる「会議室」に入った。
「会議室」という名前ではあるが、今で言えば掲示板である。発言を書き込み、その発言に対してコメントをつけることが出来る。発言には発言者の登録名や時刻が一緒に表示される。
会議室は当時は各フォーラムごとに最大で10個の会議室が持てるようになっていた。これは後日、20個に拡大されるようになる。
登録名はフォーラムに入会する時に決める。複数のフォーラムに入るにしても登録名は統一するのが普通だった。この登録名は「ハンドルネーム」と呼ばれ、会員同士はこのハンドルで呼び合う。本来「ハンドル」だけで「名前」という意味が含まれているので、ハンドルネームというのは重複表現となるのだが、ニフティではこの呼び方が一般化されていたように記憶している。
私はその当時「澪 一文・Vo\oV」というハンドルを使っていた。由来は数字の0123である。別に某引越し業者の回し者になりたいから、というわけではない。高校当時、学校の近くに「一二三薬局」というのがあり、これが「ひふみ薬局」である事を知って何となく使ってみたいと思っていたのだ。頭の0は、C言語プログラマは数を0からカウントするという習性に由来している。
後ろの「Vo\oV」はバルタン星人を表している。環境によっては真ん中の「¥」が「\(バックスラッシュ)」に見えるかも知れない。
初心者フォーラムには会議室の利用練習を兼ねた自己紹介会議室がある。早速その会議室に書き込みをした。
こうして「澪 一文・Vo\oV」がネットワーク上にデビューしたのである。