« 転校生 | トップページ | ロボッツ »

2006.10.16

廃市

 さて、時かけ、転校生と来たら普通は当然さびしんぼうの出番なのだが、せっかく録画したものを消してしまった、というのは先日書いたとおり。いやはや、DVD-RAMとは便利ではあるが恐ろしい代物である事よ。

 そこで、これはある意味チャンスだったと思うことにし、さびしんぼうの代わりとして「廃市」を見た。実を言えば、これはこれで結構気に入ってる作品なのだった。
 一応、大林監督&小林聡美という組み合わせだから、転校生から続けて見るには無理がないはずである。

 この映画、もうずいぶん前に深夜テレビで見たのが初見。そのときからすっかり気に入ってしまい、スカパーで放送されたものを録画し、ずっと保存しておいたのだった。
 おそらく、特に派手な事件が起きるわけでない淡々とした内容が深夜のけだるい雰囲気とマッチして、すんなりと見ているこちらの気持ちの中に入り込んできたのだろう。

 話の内容はといえば、正体不明の「私」がその昔卒業論文を書くために逗留した田舎で体験したひと夏の出来事を語る、というもの。
 モノクロで始まりカラーに遷移する大林節は健在で、モノローグが大林監督本人というのはまあ、ご愛嬌。

 小林聡美の役柄は、主人公が逗留する屋敷の次女で、実質的にその屋敷を切り盛りしているという設定。
 で、この小林聡美、実におとなしい。作品世界の中では他の女性と比べるとお転婆なのだが、リアルレベルで言えばごく普通の女の子。というか、この作品世界の女性はみな極端に男性に対して従順過ぎるようだ。おそらく、それによって舞台となる地域の「時代遅れな感じ」を出そうとしているのだろう。

 小林聡美の姉の夫として登場する峰岸徹がまた、実によくもてる。妻が彼にベタ惚れなのに始まり、愛人、そして小林聡美もまた彼に夢中である。

 峰岸の愛人役で登場する女優は、さびしんぼうでPTA会長をやったり、転校生では和美の母親をやった人。こういったところにばかり目が行ってしまうのは、質の低いオタクになりつつある、という事だろうか。
 ・尾美としのりは今回、書生、というより雰囲気は下男といった役回りである。見てるとなんだか不憫な感じがする。考えてみたら彼、大林作品ではあまり良い目を見てない気がする。オカマっぽかったり、下男だったり、関谷だったり。

 この作品を初めてみた時は、小林聡美の演じた少女は原田知世の方がぴったりだと思っていた。しかしこうして改めて見直してみると、これは小林聡美でこそなのだ、と思うようになった。あの小林聡美が、やや抑え気味に演じているからこそ味が出ているのだ。

 で、この作品のどうでもよい主人公。ストーリー的には何も解決せず、小林聡美にまとわりついては、その合間に卒論書いてるだけ。でもって最後は、さっさと田舎から帰っていく。これほど、主人公がどうでもいい映画も珍しいのではないだろうか、と思ってみていたが、良く考えると実はこれでよいのだという事に気がついた。
 この映画の実質的な主人公は小林聡美であり、見ている側は語り手である主人公とシンクロすることで小林聡美と過ごす夏を疑似体験することになる。そのためには、この主人公はあまり癖のあるキャラであったり、バイタリティあふれる行動力があったりしては、邪魔になってしまうのだ。
 まさしく「何もせんほうがええ」という言葉がぴったりなのである。

 そして今回、初めてこれがATGの作品だという事に気づいたのだった。

|

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/31971/12312193

この記事へのトラックバック一覧です: 廃市: