【マイギターライフ:003】我が良き友よ
鈴木君は今で言えばイケメンと言う奴で、背はすらりと高く顔立ちはキリッとしていて剣道が強く学級委員を勤める、まるで少女漫画から出て来たような人物であった。
そんな彼もやはり音楽に目覚めた。彼のお気に入りは、かぐや姫。彼の家に遊びに行った時、アルバム「はじめまして」を通しで全曲聴かせてくれた。そして全てを聞き終えた時彼はこう言った。
「なあ、フォークデュオ組もうぜ」
その頃はまだ私も鈴木君もギターが弾ける訳ではなかった。それどころか、ギターを持ってすらいなかったのだ。
若いと言うよりは幼いと言った方がふさわしい、夢にあふれたセリフである。
そして私もまた、すぐ調子に乗る性格だった(これは今でも直っていない)。
「いいね。やろうよ。で、グループ名は?」
「俺が鈴木だから、スズムシ」
「おい、俺はムシかよ!」
「いいじゃんか別に」
「良くねーよ!」
まあとんぼってグループがあるんだからスズムシってグループがあっても良かろうと言う事になり、その日は彼が聴かなくなったからやるよとくれたベイシティローラーズのシングルレコード数枚を持って帰った。
私はこれでまた手持ちのレコードが増えたと喜び、それから数日後にダイクマ茅ヶ崎店で白いギターを買った。
しかしこの白いギターは、ただの一曲も奏でることなく天に召されて行ったのだった。
(つづく)
| 固定リンク
« 何が起きてる……? | トップページ | 新兵器導入 »
この記事へのコメントは終了しました。
コメント